新型コロナ感染症は5類感染症になりました

老衰の患者さんを看取って思う事

 5月8日から、新型コロナ感染症は5類感染症に変更になり、インフルエンザと同じ扱いになります。これにともなって、コロナ関連の検査や診療については公費負担がなくなり、通常の保険診療となります。初診でコロナとインフルエンザの検査を行った場合、3割負担の方では今まで2100円程度の自己負担でしたが、これからは約4000円の自己負担となります。薬剤費も無料でなくなり、やはり自己負担が発生します。

 コロナに罹患した場合、今までは7日間の自宅療養が必要でしたが、これも撤廃されます。つまり、法律上はコロナにかかっても通常通りの生活をして、仕事も行っていいという事になります。ただ、コロナウイルスが何か変わった訳ではなく、感染力は強いままですので、インフルエンザと同じように、5日間の自宅療養が望ましいとされています。発症日を0日として、翌日から5日間自宅療養し、そして症状がほぼなくなってから1日を経過したら通常の生活に戻る、というスケジュールが推奨されています。学校ではこれがしっかりとしたルールになると思います。社会人ではこのルールに法的拘束力はありませんので、あくまで個人と会社の判断になりますが、このスケジュールに従ってもらえば、感染拡大を防止する事がかなりできるので、なるべくこれを遵守してもらいたいと思います。また、濃厚接触者の特定や自宅待機もなくなります。

 コロナ陽性者の発生届も必要がなくなりますので、今まで検査陽性の方に渡していた登録用紙もなくなります。医療機関や保健所からの、病状問い合わせの電話やメールも行きません。陽性者の集計・発表もなくなり、1週間毎の定点測定に切り替わります。という訳で、ほぼインフルエンザ診療と同じ流れになります。

 陽性者が自宅療養をする義務がなくなり、仕事や社会生活を普通に行う方が出てくると思われますので、一時的に感染者数は増えると思います。以前のように爆発的な波が来るとは思いませんが、ある程度の増加はあるでしょう。そして、それに比例して高齢者の死亡者も増えると推測されます。でも、もうこれはやむを得ない事なのでしょう。インフルエンザが大流行しても、高齢者の死亡はかなり増えます(超過死亡といいます)。これと同じように、コロナである程度の高齢者が亡くなるのは仕方がない事だと、割り切って考えるしかないのだと思います。諸外国ではこのような考えが当然として受け止められており、そうやって日本よりも速くコロナを克服してきたのです。アメリカのコロナによる死亡者は110万人、致死率は1%なのに対して、日本では死亡者7万人、致死率はわずか0.2%です。そういう意味では日本のコロナ対策はかなり成功したと言えるし、医療従事者は良く頑張ったと思います。もちろん、世界一従順な国民性によるところも大きかったと思います。

 コロナ感染症が完全に終息したわけではもちろんありません。ただ、インフルエンザと同様に、通常の感染症として扱う疾患になったという事です。インフルエンザで亡くなる方がいるように、コロナで亡くなる方もいます。転倒して骨折し、寝たきりになって、誤嚥性肺炎で亡くなる高齢者もいれば、コロナで寝たきりになって、食事が取れなくなり亡くなる高齢者もいるのです。人間、いつかは死を迎えます。その原因は様々ですが、他の疾患と同様に、コロナ感染症もその原因の一つにすぎないのです。

 昨日までの5日間で、3名の在宅患者さんが亡くなりました。共通しているのは、全員90歳以上、自宅で、老衰で亡くなりました。昨日看取った患者さんは、100歳の誕生日を2日後に控えていましたが、力尽きました。皆さん、安らかなお顔でした。

 介護力不足により、自宅で療養を続けるのが困難なケースが増えており、当院の在宅患者さんも現在7割以上が施設入所の方々です。施設入所が悪いという訳ではもちろんありませんが、自宅で家族に囲まれて穏やかに過ごし、少しずつ老いを重ねて、枯れるように亡くなっていく、それはある意味理想的な死ではないかと個人的に思っています。死を忌み嫌う、避けるのではなく、生活の延長線上に自然にあるものとしてとらえ、人生最後の大仕事を家族で見守ることができたなら、それは残された家族にとって貴重な経験、財産になると思います。そして、家族や友人の死をきっかけにして、より多くの方に、自分の「生」と「死」について、もっと考える機会を持っていただけたらと思っています。「死」について考えるという事は、残った人生を、どのように生きていくかという事そのものなのです。

 在宅医療には様々なドラマがあります。私は、これからも、人生という壮大なドラマのお手伝いを続けていきたいと思っています。(写真は北海道当別町のひまわり畑です)

岡田内科循環器科クリニック

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